新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言が発出されて以降、従来の対面形式のセミナーや展示会が開催できなくなりました。当社にも「オンラインセミナー」や「オンライン展示会」の開催方法についてのご相談が急増しています。
「いままで集合型でのセミナーはやったことがあるが、オンライン配信はまったく経験がないので、何をしたらよいかがわからない」「ウェビナー配信ツールはどれがよいの?」「どうやって集客すればよいの?」など、相談内容はさまざまです。
今回のコラムでは、当社がオンラインセミナー立ち上げまでの企画段階でおこなったことや、実際のオンラインセミナー運営にあたって準備したことを「10のSTEP」でご紹介します。
【STEP 1】セミナーの目的に合わせた公開範囲とターゲット顧客、内容を企画する
いうまでもなく、最も大事なものは、オンラインセミナーの「中身」です。どのような内容にするかは、そのセミナーの公開範囲と参加対象者によっても変わります。
たとえば、公開範囲は下記のように「だれでも視聴できる公開型」にするのか、「事前申込者限定」にするか、「有料(課金)型」にするのかによって、配信方法や提供すべきコンテンツの質が変わってきます。
当社では、ユーザーシナリオ作成やビジネスプロセスマップ作成を通して、顧客体験のストーリーを描き、セミナー内容の企画やターゲット顧客を決めています。
【STEP 2】オンラインセミナーのメリットを活かした手法とツールを選択する
「どのような場にしたいのか」によって、適切なツールも、必要な機材も、進行のしかたも変わります。まずは、オンラインセミナーにはどういう開催パターンがあるのか整理してみましょう。たとえば以下の図のように分かれます。
検討の視点
- 一方通行なのか双方向なのか
- 一方通行の場合
- ライブ配信なのか、録画配信なのか
- 公開配信なのか(認知促進を重視するか)、申込者限定配信なのか(名簿獲得を重視するか)
- 双方向の場合
- すべての参加者と一斉にディスカッションや質疑応答ができればよいか?
- 参加者を複数チームに分けて、グループディスカッションを設けたいか?
- 展示会のように、参加者も主催者側スタッフも自由に動き回って1対1で個別コミュニケーションが取りたいか?
これまでの対面形式でやっていたことのすべてを、オンライン形式で再現しようとしてもとうまくいきません。
必要条件に優先順位をつけて「これだけは譲れない」というものと「これはあきらめてもよい」というものを整理しておきましょう。
ただし、オンラインセミナーは対面セミナーの劣化版ではありません。対面セミナーではできなかったことが、「オンラインセミナーだからこそできる」こともあります。たとえば、ライブ配信した内容を手軽に録画して再配信することや、リアルの場では遠慮して「一切発言のない参加者」が、オンラインであれば「チャットで質問を投げかけてくれる」など。オンラインならではのメリットをどう活かすかも考えながら開催方法を検討しましょう。
【STEP 3】撮影、編集、配信方法を決め、必要なツールの契約やセットアップをする
オンラインセミナーを撮影(録画)したものを、どのように編集し、どのような手段を用いて参加者に届けるか。
あらかじめ決めておいて、必要な配信ツールや編集ツールを契約しておきます。
当社の場合は、下図のように代表的な手段をリストアップし、長所・短所を比較したうえで、STEP1やSTEP2で決めたセミナー内容にふさわしいツールを選定しました。
また選定にあたっては、いきなり高機能な方法を選択するのではなく、「ここまで経験が積めたら(ここまで成果が上がったら)配信方法もステップアップしよう」と、まずは「手軽に運用できる手段であること」を重視しました。
【STEP 4】配信に必要な機器や設備をそろえる
「ウェビナー配信に必要なツールや設備って何?」
これは、私たちも初めて開催企画をした際に、特にどうしていいのかわからず困ったことです。本格的に設備を整えようとするとキリがないですが、手軽に始めようとするのであれば、実は以下の機器だけで開催できます。
必要最低限の機器や設備
- PC
- 配信ツールの操作や投影するスライド資料の操作をおこなうためのもの
- ウェブカメラ
- 講師の顔を映すためのもの
- ノートPCなら備え付けのカメラでもOKだが、映る確度がイマイチのため、外付けのウェブカメラがあるとより良い
- スピーカーフォン/ヘッドセット
- 講師の音声を届けるためのもの
- インターネット回線
- 安定的かつ十分な帯域を確保できることが需要
状況に応じて必要な機器や設備
配信会場の広さや、配信ツールの種類によっては、以下の設備も必要な場合があります。
- ビデオカメラ/三脚/延長ケーブル
- 広めの会場など、ウェブカメラでは講師の撮影が難しい場合
- 対面セミナーの同時配信としてオンライン配信をおこなう場合
- エンコーダー(ビデオキャプチャ)
- ビデオカメラで撮影した動画をPCに取り込むための機器
- 対面セミナーの同時配信としてオンライン配信をおこなう場合
- 照明
- 会場の照度が足りず、講師の映りをよくしたい場合
- ストリーミング・レコーディングソフトウェア
- ビデオカメラやパソコン画面、音声などをライブ配信する際に必要なストリーミングソフトウェア。OBS(Open Broadcaster Software)が有名
【STEP 5】運営の業務プロセスを設計する
募集、受付管理、受講者への事前案内、当日の進行管理、終了後のフォローアップまで、オンラインセミナーの特性に合わせて運営業務プロセスを設計する必要があります。
当社では、使用しているCMS(ウェブサイト更新システム)やMAツール、顧客管理システムの仕様を考慮しながら業務プロセスを整理し、複数のスタッフで役割分担して運営管理ができるようにチェックシート化して利用しています。
【STEP 6】集客をおこなう
業務プロセスが決まったら、いよいよ具体的にオンラインセミナー開催に向けて集客を進めます。
集客において大事なことは「だれに招待案内を出すか」です。オンラインセミナーは「距離の壁」がなく「移動の手間」もないため、気軽に参加できるというメリットがあります。
しかし、だからといってすべての顧客名簿に対して、メールを介して全方位的に集客をしても、クレームになったり、せっかくの見込み顧客リストを「配信停止」などで失ったりしてしまいます。そもそも、興味が浅い人や課題と合致しない人を無理やり集めても、参加者の質が落ちその先のリードクオリフィケーション(顕在化した見込み顧客から購入可能性の高い見込み顧客を選別すること)がしづらくなります。
【STEP 7】受付管理をおこなう
受付管理においては、事前ガイダンスに細心の注意を払う必要があります。オンラインセミナーツールは玉石混合で、ツールによって参加者に求める事前セットアップや当日の参加方法が異なります。
当日「うまく参加できません」といったトラブルにならないために、事前に必要な情報を伝えておきましょう。
【STEP 8】当日の役割分担を決める
本番を迎える前に、講師を含む運営スタッフの当日の役割分担を決めます。
- 開始時刻より早めに入ってきた参加者をどのように出迎えるか?
- 司会はだれがおこなうのか?
- 講師がおこなうことは?アシスタントがおこなうことは?
- 画面共有などの操作はだれがおこなうのか?
- チャットやQ&A機能の対応はだれがどのようにおこなうのか?
オンラインセミナーならではのやることがあり、役割分担次第で当日の進行のスムーズさが大きく変わります。当社ではあらかじめ当日の役割分担表をつくり、参加者をオンラインセミナールームに迎え入れる前に最終確認を毎回実施しています。
【STEP 9】オンラインセミナーを開催する
よく「準備8割(成功するかどうかは、事前準備で80%決まる)」といいますが、オンラインセミナーも同様です。STEP8までがちゃんとできていれば、当日は安心して進めるのみです。あとは場数をこなして慣れるしかありません。
【STEP 10】参加者のアフターフォローをする
オンラインセミナーは手段であり目的ではありません。セミナーの参加者を顧客化するためにもアフターフォロー(追客)の質を上げることが大切です。
オンラインのよいところは「データが容易に集められること」です。当社ではアンケート回答内容に加えて、MAツールやアクセス解析ツールを用いてウェブサイト閲覧傾向の分析をしています。そのうえで「参加いただいた方がどのような課題や悩みを持っているか」を考察し、課題に適した解決策をご提案するようにしています。
【最後に】大事なポイント
ここまででオンラインセミナーの開催にあたっての流れを10のステップで紹介してきました。しかし、実はSTEP 1の前にやるべきことがあります。それは、「そもそもなぜオンラインセミナーをする必要があるのか?」の目的をはっきりさせておくことです。アフターコロナは、セミナーや展示会だけでなくビジネスのあらゆる局面で、いままで通りにはいかなくなります。したがって、自社のビジネス全体を俯瞰して整理し、デジタル変革をするポイントを整理したうえで、オンラインセミナーの位置づけや役割を定義しましょう。それがないと手段が目的化してしまいます。
リアルでやっていたセミナーを、そのままオンラインに置き換えるだけではダメ
営業活動やマーケティング活動のプロセス全体を俯瞰して整理し、デジタル変革をするポイントを整理しましょう。
いままで通りのプロセスのまま、「対面セミナーができなくなったから、オンラインに切り替える」「対面営業ができなくなったから、オンライン商談ツールを入れる」といった部分だけを切りだしてオンライン化しても、顧客満足度向上や顧客価値創造にはつながりません。
当社では、ビジネスプロセスマップ作成や顧客定義をはじめとするデジタルマーケティング戦略策定を通して、事業戦略にもとづいて営業活動やマーケティング活動のデジタル変革に取り組むための基盤整備とチームづくりを支援しています。
営業職はこの20年で100万人も減少した…営業職が減少することを前提にマーケティングプロセスを設計する
総務省統計局「労働力調査年報」によると、2001年には968万人いた営業職(販売従事者)が2018年には864万人にまで減少したとされています。つまり、1社ずつ足で回って顧客開拓する対面型セールスは、いままで通りの人員や体制での存続はできません。
今後さらに人口が減少することは「すでに決まっている未来」です。
複数の見込み顧客に対して同時にTIPSを提供し、インサイドセールス活動などを通じて顧客化するというように、営業マーケティングのプロセス自体を見直していくことは、コロナ対策に限らない、差し迫った企業課題になってきています。
見込み客の情報収集手段で最も多いのは「企業のウェブサイト」
トライベック・ブランド戦略研究所がおこなった調査では、BtoBユーザーに「製品・サービスについての情報を普段どのようなところから得ているか」という問いに対して、最も多かった回答が「企業のWebサイト」(66.6%)でした。ちなみに、研修・セミナーは23.4%、展示会は22.9%と報告されています。このレポートは毎年発表されていますが、年を重ねるごとに「企業のWebサイト」のポイントは上昇しています。
オンラインセミナーへの需要は今後もつづくのか?
2020年6月時点で緊急事態宣言は解除されました。しかし依然として集合型での対面イベントは、開催の敷居が高い状況がつづいております。果たして、これはいつまでつづくのでしょうか?「オンラインセミナー(ウェブセミナー)」のニーズは、緊急事態をしのぐための一時的なものではなく、今後も必要性はつづくと考えます。
このことからも、ウェブサイトでの情報収集活動に沿って視聴できる「オンラインセミナー」を顧客接点として取り入れることは有効です。
新しいことでも失敗を恐れずにチャレンジすることが大切です。最初から成功はありませんので、失敗経験を積みながら、新しい顧客開拓の可能性を探りましょう。
デジタルを活用したマーケティング変革をお手伝いしています。ビジネスプロセスマップ作成によってマーケティングプロセスを整理し、そのうえでオンラインセミナーの位置づけを決めてウェブマーケティングとの連携をはかります。 30分オンライン無料相談もおこなっていますので、まずはお気軽にご相談ください。
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