マーケティングとイノベーション
マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす
Business has only two functions – marketing and innovation.
P.F.ドラッカー『マネジメント【エッセンシャル版】』 ダイヤモンド社、2001年
これは、ドラッカーの名言中の名言です。しかし「マーケティング」も「イノベーション」も使う人によって意味はバラバラ。あいまいな言葉のままビジネスの現場で使われています。今回は「マーケティングとイノベーション」について考えてみましょう。
1. ウェブはマーケティングの最前線
「ウェブサイトって、マーケティングの最前線だなぁ」と、ウェブ制作の現場で日々感じています。
ウェブ制作に関わる時に念頭にあることは二つ
- この会社にとっての本当の顧客とは誰か?
- 本当の顧客にとっての価値あるウェブサイトにするにはどうしたらいいか?
です。
デザインをしたり、HTMLを書いたりはしない私ではありますが、ウェブの仕事で心がけていることがあります。それはサイトが「顧客視点」で一気通貫されているのか否かをチェックすること、すなわちマーケティング視点を持ち続けることです。
「マーケティングの理想は、販売を不要にすること?!」でも書いたように、ドラッカーは「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである」と述べています。ウェブサイトは、この理想を実現するためのツールだと感じます。顧客が「価値がある」「買いたい」と判断し、次の行動(購入や問い合わせなど)に移行する場所そのものをウェブ上に展開できてはじめて、成果があがるウェブサイトといえるでしょう。
2. ウェブ解析はイノベーションの宝庫
「ウェブ解析は、イノベーションの宝庫だなぁ」とも日々感じています。
イノベーションといえば、「技術革新と訳され、新たな技術開発によって新しい価値を創造する」というようなフレーズをよく見かけます。実際、その職務についた人たちは、これまでにない新しい商品やサービスをゼロから生み出すために、生みの苦しみと格闘しています。
一方、ウェブ解析というのは、PV数や離脱率、検索キーワードといったことを調べるだけの、あまり発展性のない仕事と思われがちです。
しかし、社会動向や、昨日見たワイドショーで取り上げられた話題を思い出したりしながら、継続的かつ連続的にウェブ解析をおこなうと、物事が立体的多面的にみえてきます。そこまでわかると、多くの人が困っていたり、漠然と不便だと感じていたりする、隠れたニーズにも気づくことができます。まさに、イノベーションの「ネタ」の宝庫となっていきます。
3. イノベーションのための7つの機会
ドラッカーは『イノベーションと起業家精神』のなかで、イノベーションの機会には次の7つがあると述べています。
②ギャップを探す
③ニーズを見つける
④産業構造の変化を知る
⑤人口構造の変化に着目する
⑥認識の変化をとらえる
⑦新しい知識を活用する
P.F.ドラッカー『イノベーションと企業家精神【エッセンシャル版】』ダイヤモンド社、2015年
これらは「信頼性と確実性の大きい順」に①から並べられています。一般的に理解されている技術革新としてのイノベーションは⑦にあたり、信頼性と確実性は小さいと位置づけられています。
- イノベーションを社内で起こすにはどうしたらいいのだろうか?
- イノベーションの機会(ネタ)ってどうやって見つけるんだろうか?
とお悩みでしたら、ウェブ解析をすることをお勧めします。ドラッカーが指摘する「イノベーションのための7つの機会」は、ウェブ解析で必要な着眼点そのものです。②の「ギャップを探す」はウェブ解析が得意とするところですし、③の「ニーズ」が見つかれば、それを「本当の顧客とは誰か」という問いに活用できます。データがそろえばイノベーションに向かって社内の協調を得るのも容易になります。
「現実を直視せよ」という言葉もドラッカー名言のひとつですが、ウェブ解析という事業成果の最大化をおこなう作業から、ドラッカーが伝えている「マーケティングとイノベーション」を、より現実的なものとして実感できるでしょう。