ウェブサイトを設計していると、リンクをバナー画像にしてほしい、という要望をいただくことがしばしばあります。テキスト (文字) によるリンクよりも、見栄えのよい画像によるリンクのほうが、よりユーザーにアピールできる (ユーザーを誘導できる) ような気がするからです。
「バナー画像」即ち「無関係な広告」という解釈
ところが、バナー画像でリンクを設けていても、期待したようにユーザーがリンクをクリックしていない、うまく誘導できていない、というケースが往々にして見られます。
私自身、さまざまなプロジェクトでユーザビリティテストを行なう中で実感したのですが、せっかく労力をかけて作ったリンクバナーが、ユーザーにまったく見られないケースが多いことに驚かされます。
これは、バナー画像であるというだけで条件反射的に、ユーザーが「自分と無関係な広告」だと解釈 (誤解?) してしまうことが多いからです。
バナーブラインドネス (banner blindness) というセオリー
Web ユーザビリティの用語で、「バナーブラインドネス (banner blindness)」という言葉があります。直訳すると「バナーを視認できない」という意味になりますが、ウェブサイト上のユーザー行動において「バナー画像がユーザーに無視される」現象を端的に言い表した言葉です。このような言葉がセオリーとして存在していることからも、バナー画像の扱いの難しさを窺い知ることができます。
もちろん、ユーザーの利用コンテキストに合致する形で適切にバナー画像を提示し、目的達成のためのしかるべきページにユーザーをスムーズに誘導する...という戦略があればよいのですが、単に「見栄えがよいから」というだけの理由で、バナー画像によるリンクを用意しても、それほど効果は期待できないでしょう。
基本はユーザーの言葉を用いた文字による表現
ウェブサイトで情報を探す際、ユーザーは自分自身の言葉で (多くの場合、無意識的に) その情報を表現し、頭に思い浮かべながら、斜め読みします。ウェブページ上に、自分の言葉にマッチした表現があることに気付くことができて初めて、そこを深く見ようとして、次のアクション (リンクをクリックしたり) を起こします。
その意味で、まずは的確な「言葉による」表現、つまり文字 (テキスト) による表現を試行錯誤することで、リンクの効果を向上させることを考えたいものです。ビジュアルを用いて、よりアイキャッチングな (ユーザーの目を惹く) リンクを設置したい、という場合も、的確なテキスト表現とペアで考えることが大事です。