ウェブサイトを制作する際に、「よし!ウチの会社のセールスポイントを全面的に訴えたサイトにしよう!」と意気込んでいませんか?セールスポイントとは「商品を売り込むときに、特に強調する長所」を意味しています。しかし、この言葉には落とし穴があります。
1.「セールスポイント」と「顧客にとっての魅力」は違う
国内でドラッカーに依拠した著作を数多く著している藤屋伸二氏は、「情報過多の状況では、あなたの会社が平凡な情報を発信しても、顧客に届くことはありません」と述べています。 (出所:『ドラッカーの黒字戦略』 CCCメディアハウス、2014年、P.96)
顧客にとっての「有益な情報」の発信が大事だということになるのですが、では、その「有益な情報」とは一体何でしょうか?藤村氏は続けます。
『あなたが伝えたい情報』ではなく、『顧客が知りたい情報』です。つまり、『あなたの会社のセールスポイント』や『商品のセールスポイント』ではなく、顧客のメリットを表す『顧客にとっての魅力』です。
私たちは日常生活において、客の立場で買い物をするとき、例えば「このコップは私にとって価値があるのだろうか。お金を払ってでも手に入れる必要があるのだろうか。」と、口に出して言わないまでも、購入の可否を瞬時に判断しています。
しかし、自分が商品やサービスを提供したり、情報を発信したりする立場になったとき、その観点がスッポリと抜け落ちてしまうことがあります。それが、一方的な「セールスポイント」につながるのです。
2.「消費者視点」という価値観
USJのV字回復の立役者である森岡毅氏は、著書のなかで、USJを変えたのは「『消費者視点(Consumer Driven)』という価値観と仕組みに変えた」(p.28)、この1つだけだと言っています。
「『ゲストが本当に喜ぶもの』と『ゲストが喜ぶだろうと作る側が思っているもの』は必ずしも一致しない」(p.29) と、商品やサービスを提供する側とそれらを受け取る消費者側のギャプを認識し、「会社側のどんな事情もどんな善意も、消費者価値につながらないのであれば、一切意味がない」(p.29)と断言しています。(出所:『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』角川書店、2016年)
(注)森岡氏は「消費者」という言葉を使っていますが、これは「顧客」という言葉と同意語であると理解しています。
3.顧客と市場を知るのは、顧客のみ
「顧客や市場について、企業が知っていると考えていることは、正しいことよりも間違っていることのほうが多い。顧客と市場を知っているのはただ1人、顧客本人である」
P.F.ドラッカー『創造する経営者 』ダイヤモンド社、2007年、P.118
顧客のことを知っているのは、顧客本人なのです。「企業が売っていると考えているものを顧客が買っていることは稀」(p.118)で、企業がひねり出した「セールスポイント」は顧客に届いていないことがわかります。 では顧客を知るためにはどうすればいいのか。その問いにもドラッカーは明確に答えています。
「顧客に聞き、顧客を見、顧客の行動を理解して初めて、顧客とは誰であり、彼らが何を行い、いかに買い、いかに使い、何を期待し、何に価値を見出しているかを知ることである」
P.F.ドラッカー『創造する経営者 』ダイヤモンド社、2007年、P.118
当社はさまざま企業の「サイト診断」をさせていただく機会があります。見た目がきれいでかっこいいサイト、使いやすそうに見えるサイト、自社のセールスポイントを全面的に打ち出したサイトなど多々あります。しかし、私どもがサイト診断をするときの基準は「顧客にとって問題解決の手段であるかどうか」しかありません。「顧客」は誰なのか、その顧客はどんな「問題」を抱えていて、このサイトでどうやって「解決」するのか。顧客の立場となってサイト診断をしています。
「セールスポイント」という言葉が会社の一方的な声掛けになっていませんか?顧客に寄り添った「メッセージ」として届けられ、顧客の問題解決のサポートや顧客にとって魅力あるものになるよう、ウェブサイトを見直してみてください。
余談となりますが、日本語の「セールスポイント」、英語ではそのまま「sales point」と書きたいところですが、これは和製英語です。正しくは「selling point」ですので、海外で使うときはご注意を。
(注)サイト診断の詳細は、当社ウェブサイトの「現状分析(サイト診断)」をご覧ください。