誰もがマネージャーになれる
「マネージャー」と聞いて、何をイメージしますか?
前回のコラム「『マネージャーとは何者なのか?』(前編)」では、マネージャーという言葉の語源や意味をひも解いていきました。
今回のコラムでは、単なる「管理者」のイメージを超えるマネージャーの意味や役割について考えていきましょう。
1.マネージャーはオーケストラの指揮者に似ている
マネージャーとは何者なのか?
一般的には「マネジメント(経営管理)をする人」「人の仕事に責任を持つ者」と定義されてきました。組織社会が拡大し、生産手段が分業化され、仕事が細分化、専門化されていくにともない、工程ごとの専門家が組織を作るようになりました。こうした専門家たちが、専門能力にもとづいて勝手に仕事を進めてしまうと、生産性があがらないため、組織を管理運営するための「マネジメント」が必要になりました。
ドラッカーは、「組織全体を見て、投入した資源よりも大きなものを生み出すことがマネージャーの仕事である」と定義しました。ドラッカーは、マネージャーの理想形は、オーケストラの指揮者であると、常々言っていました。
オーケストラでは、専門家である各パートの演奏者の強みを生かし、統合して素晴らしい音楽を生み出します。同じようにマネージャーは、組織メンバーの専門的な強みを生かし、弱みを消し、1つのゴールに向かっていかなければなりません。
2.マネージャーは、育成するもの
「マネージャーは特別な人がなるものではない」というのがドラッカーの主張です。動物や昆虫などは、体が大きいという遺伝的要素がリーダーの資質で大事なことですが、人間の場合、声が大きい、体が大きい、迫力があるなど遺伝的要素だけでリーダーが決まることは、近年ほぼありませんよね。
組織におけるリーダー「次のマネージャーをどう育てるか」、これもまたマネージャーの大きな役割の1つです。昨今の日本企業の課題として「後継経営者育成」が社会問題にまで発展していますが、自分の次の後継者をどうするか、頭の痛いところです。
またドラッカーは、「マネジメント開発は、人事計画やエリート探しではない」と言っています。
「選ばれたエリート」だけを集めて、その人たちを教育している会社も多いですが、一部のエリートだけを育成していても、実際は放っておかれた人たちが会社の大部分の仕事をになっています。エリートから外れた人たちは、モチベーションの低下により成果はあがらず、生産性は低く、新しいことへの意欲は失われる、というドラッカーは辛辣です。
加えて、「選ばれたエリートの半分は、40代にもなれば、口がうまいだけだったことがあきらかになる」とも言っています。
そう考えれば、近年指摘されている「女性の積極的な管理職登用」についてもあてはまるのではないでしょうか。これまでエリート教育の対象に入っていなかった女性たちに、いきなり管理職を任されても、準備ができていないのは当然です。
3.マネージャーとは何者なのか
マネジメントは、Administrate(職位職務を管理する)でも、Control(支配する)ことでもなく、マネージャーは、人の仕事に責任を持つもの(administrator)でも、ボス(controller、boss)でもない。では、マネージャーは何をするものなのか。ドラッカーは、あらゆるマネージャーに共通した仕事を5つ挙げています。
①目標を設定する
②組織する
③動機づけとコミュニケーションを図る
④評価測定する
⑤人材を開発する
マネージャーはこれらの仕事に集中するべきだと思われますが、そうはいっても、実際のマネージャーは、上記5つの仕事以外のことに多くの時間を使っています。プロジェクトの管理、会議や打ち合わせ、顧客や取引先、部下の急な相談、報告書や稟議書の作成、メールの対応などに時間を取られています。これらの仕事は大事なことですが、マネージャーだけがおこなうべき仕事ではありません。
そして、マネージャーの最重要ミッションは、「組織の成果に責任を持つ」です。
長期的視点と短期的視点を調和させながら、事業の目標を明確にし、顧客や社会によりよいものを提供し、企業をよりよい方向にすること。これがマネージャーの役割であり、その結果生み出される「成果」に責任を持つものがマネージャーなのです。
というように、仕事のあり方を捉えれば、「マネージャー」という肩書きがある人だけが、マネージャーではありませんね。あなたは「成果」を中心に日常の業務を捉えていますか?