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外部環境の変化を他人事にしていませんか

投稿日: | 投稿者:ayatori

コラムを書こうとした朝、日本自動車工業会の豊田章男会長が「なかなか終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきたのではないかと」発言したニュースが。 経団連の中西宏明会長も「終身雇用なんてもう守れないと思っている」と、日本経済のリーダーが、そろって「終身雇用の限界」と切り込んだ発言をし、界隈をざわつかせています。

このニュース、あなたの企業への影響はありますか?あなた自身はどう受け止めますか?特に関係ないこと、日本のトップ企業の話で「大企業っていろいろあるよね」で終わらせていませんか?

(出所)「終身雇用守るの難しい」トヨタ社長が“限界”発言、2019年5月13日
https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000154403.html

1.予測不可能な「外部環境変化」が確実に訪れる

東京オリンピック・パラリンピック大会、大阪万博、米中貿易問題、2020年問題、5G対応、少子高齢化社会にともなう労働力不足、18歳成人、社会インフラ整備不足、消費税増税、諸々の規制および規制緩和、政権動向…。ざっと挙げただけでも、企業活動に直接、または間接的に影響を与える要因のオンパレードです。

例えば、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)は、官民を巻き込んだモビリティ革命に向けた取り組みです。MaaSを単なる一過性のものと見るか、自分事としてビジネスチャンスに転換するのか、組織として判断しておかなくてはいけません。
これを、自動車関係や公共交通を中心とした業界のことだと思っていませんか?ビジネスは地続きですので、他業界を中心としたキーワードであっても、あなたの企業に取って代わる商品やサービスが登場するかもしれませんし、あなたの業界の外で、新たなビジネスが芽吹いているかもしれません。

2.コトラーのPEST分析

マーケティングの神様P.コトラーは、「調査をせずに市場参入を試みるのは、目が見えないのに市場に参入しようとするようなものだ」と言っています。(出所:コトラーの戦略的マーケティング、ダイヤモンド社、2000年、P48)
「なんだ、当たり前じゃないか」という方も多いかと思いますが、実際は上意下達で、とりあえず新規事業、とりあえず業務改善として、担当者も何の疑問も持たずに市場参入業務がとりおこなわれています。

そこでコトラーは、市場参入前、市場を外部環境を調査するツールとして、「PEST分析」を提示しています。

PEST分析とは、主に経営戦略や海外戦略等の策定、マーケティングを行う際に使用し、自社を取り巻くマクロ環境(外部環境)が、現在または将来にどのような影響を与えるか、把握・予測するためのもの手法です。Politics(政治)、E= Economy(経済)、S=Society(社会)、T=Technology(技術)という4つの視点から分析することから、それぞれの頭文字をとり「PEST」と言います。

(出所)ビジネス+IT,PEST分析とは何か?コトラー教授が考案、海外進出を行う際にも使えるフレーム
2015年1月29日https://www.sbbit.jp/article/cont1/29171

PEST分析の各要素は、自社組織または個人がコントロールできない、予測困難なものばかりです。しかし、その傾向は客観的に情報収集し調査できるものです。ただし、やみくもに集めても、意味のないデータの山にしか過ぎません。「何のために調査するのか」「どんなことを調べたいのか」「そもそも自社の使命とは何か」を重々理解して、PEST分析にのぞまなければいけません。

PEST分析

政治的要因
規制など、市場のルールを変化させるもの

法律、法改正、税制、減税、増税、政治、政権交代、裁判制度、政治団体、デモなど


経済的要因
景気や経済成長など、価値連鎖に影響を与えるもの

景気動向、経済成長率、物価、為替、株価、金利、原油、消費動向など


社会的要因
人口動態の変化など、需要構造に影響を与えるもの

人口動態、密度、構成、流行、世論、世帯、宗教、教育、言語、老齢人口、少子化など


技術的要因
ITなど、競争ステージに影響を与えるもの

インフラ、IT活用、イノベーション、特許、新技術、技術開発など


(出所)ビジネス+IT,PEST分析とは何か?コトラー教授が考案、海外進出を行う際にも使えるフレーム
2015年1月29日https://www.sbbit.jp/article/cont1/29171

3.ドラッカーによるイノベーションの7つの機会

当コラムでたびたび登場するドラッカーは、外部環境変化をどのように捉えているのでしょうか?彼は、新規事業や業務改善によるイノベーションの機会として、7つの領域で把握しています。(コラム「ウェブマーケティングの本質とは?」の「企業に必要な2つの機能 3.イノベーションのための7つの機会」で紹介しています。)

特にドラッカーが注視しているのが「人口構造の変化」です。対象となる顧客の現在の人口構成や地域性、消費の特徴を把握するのはもちろんですが、その年齢構成をそのまま数年後にスライドさせれば、その年の対象顧客が確実に把握することができます。

イノベーションの7つの機会の視点と、さきほどのPEST分析と掛け合わせ、自社を取り巻く外部環境を見直せば、おのずと「自社としてやるべきこと、やらなくてもよいこと」が整理できます。
例えば、マイクロソフトやシェル石油といった海外の企業は、未来の社会に向けた「シナリオ」を続々と公開し、そのなかで自社がどんな役割を果たし、どこを目指すのかを明示しています。「すでに起こった未来」の種はそこかしこにあります。「ゆでガエル現象」のカエルように、お湯が煮え立つまで待っている時間はありません。ぜひ外部環境分析に手間を惜しまないようお願いします。

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