ウェブサイトを設計していて、あるいは運営していて、しばしば問題になるのが、ホーム (トップページ) における「場所取り争い」です。特に、比較的規模の大きな企業 (事業部門が多岐にわたり、紹介したい商品やサービスが多い企業) のサイトでよく見られます。トップページは企業サイトの「顔」ということで、「自部門の商品をもっとアピールしたい」「自部門のサービスへのリンクを目立つようにして欲しい」という意向がはたらきやすく、部門間での衝突を招き、結局は「バナーが多くてごちゃごちゃしている」「なんだかまとまりのない」トップページになってしまう...という具合です。
ホーム (トップページ) の役割
言うまでもなく、ホーム (トップページ) は、企業サイトの「顔」として重要です。その企業がどんな商品やサービスを扱っているかを俯瞰的に見せたり、最新情報 (ニュース) を提示したり、ユーザー (顧客) を個々のコンテンツにスムーズに誘導したり、といった役割を担っています。さらには、「企業のメッセージを明示的/黙示的に顧客に伝える」「企業のブランドイメージを簡潔な形で顧客に伝える」といったはたらきもあるでしょう。
ここでひとつ、理解しておきたいのは、企業サイトのトップページは「企業全体」のためにある、ということであって、「ある個別の商品やサービス」のため (だけ) にあるものではない、ということです。
大事なのはランディングページや詳細コンテンツの充実
幸いなことに (?)、Web ユーザーの多くは、商品/サービスに興味がある場合、検索エンジンやソーシャルメディアを経由して、直接その商品/サービスのページにアクセスする、という行動を取ります。トップページで顧客の目に触れる機会を増やすことも大事なことではありますが、それ以上に大事なことは、具体的なランディングページや、その先の詳細コンテンツをいかに充実させるかなのです。
顧客 (ユーザー) の目的やコンテキストを理解する
ランディングページや、そこから誘導する詳細コンテンツを充実させるために必要なことは、顧客 (ユーザー) の目的やコンテキストを理解し、それに対して最適な道筋を提供するということです。
アクセスしてくる顧客がどんな人で、どんな事前の背景知識を持っているのか、また知りたい (得たい) 情報は何なのか、その顧客に取ってほしい次のアクションは何か、そのアクションへの動機づけをどう提供するのが適切か...などを、しっかりと調査/検討し、サイトのデザイン (設計) に反映させることが大切です。
「そんなこと、あたりまえでしょう」という声が聞こえてきそうですが、ホーム (トップページ) の「場所取り争い」の場を見ていると、往々にしてこの視点が抜け落ちていることが多いものです。この状態で仮に「場所取り争い」に勝利し、トップページでの露出を増やすことができたとしても、結局は「成果につながらない」という結果におちいるでしょう。
思うに、トップページの「場所取り争い」は、マスメディアの広告枠を得ることに近い発想かもしれません。「他よりも目立つように存在をアピールして、あわよくば顧客を自分のコンテンツにフックさせたい」という発想が、顧客の実際の Web 閲覧行動と合致しているか (また、最終的なコンバージョンにつながるか)、については、いま一度、冷静に考えてみてもよいと思います。