ウェブサイトにおいて、アクセシビリティを担保することはとても重要です。ビジネスの機会損失防止という観点でもそうですし、同時に、人権という観点でもそういえます。
「人権」と言うと大仰な感じがするかもしれませんが、ウェブサイトは人々の生活に欠かすことができない基本インフラです。特に障碍者にとっては、多くの必要な情報を入手できる手段、各種サービスを健常者と同などに利用できる機会として、非常に大きな役割を担っています。行動範囲の広がりや社会参加にもつながっており、Webはある意味、「障碍をもつことが足かせにならない社会」を体現しているともいえるでしょう。
このように捉えた場合、アクセシビリティが不十分なサイトは、障碍者の人権への配慮が足りなと指摘されるようになるかもしれません。
世界の動き
国際連合が2006年12月に採択した「Convention on the Rights of Persons with Disability (障害者の権利に関する条約)」には、障碍者の「情報通信 (information and communications)」の利用に関する記述が散りばめられており、ウェブサイトを含むICTが重視されていることがうかがえます。
これを受けて各国では、法によって、ウェブアクセシビリティ対応を求める動きが見られ始めています (参考 : 世界各国における法律によるウェブアクセシビリティの義務化 - NAVER まとめ)。その多くは国や政府機関サイトが対象となっていますが、カナダ (オンタリオ州) や韓国のように、民間企業のサイトも対象にしているところがあります。
日本は無関係?
日本とて無関係ではありません。ビジネスがグローバルに広がる中、ある国でのアクセシビリティ関連法規が日本企業にも影響を与えることがあります。たとえば米国の「航空アクセス法 (the Air Carrier Access Act : ACAA)」に基づく「Accessibility of Web Sites and Automated Kiosks at U.S. Airports (Part 382)」というルールでは、外国の航空会社も含め定員60名以上の路線を米国内にもつ航空会社に対して、WCAG 2.0 の達成基準など級「AA」を満たすウェブサイトが求められています。また、カナダ (オンタリオ州) や韓国に現地法人をもつ企業であれば、その現地法人サイトは法に従って適切にアクセシビリティを担保する必要があるでしょう。
なお、上述の「障害者の権利に関する条約」は、日本も2014年に批准しています。これを受けて「障害者差別解消法」が制定され、2016年に本格施行される予定です。本格施行を前に、JIS X 8341-3:2010 を障害者差別解消法の合理的配慮ガイドラインのひとつとすべきという議論もあり、注目されます。
ウェブサイトの作り手としての責任
ウェブサイトを作る (設計し、構築する) 立場としては、「ウェブサイトは人々の生活の基本インフラである」ことをあらためて自覚し、ターゲットユーザーがどんな人かにかかわらず、アクセシビリティを担保してゆきたいと考えています。具体的には、ガイドライン (WCAG 2.0 および JIS X8341-3:2010) の熟知と適切な実装が必要ですし、またサイト運営フェーズにおいてもこれらのガイドラインが適用され続けられるような工夫をご提案できるよう、これからも努めて参ります。