自社のウェブサイトを5年前にリニューアルしているので、そろそろ次のリニューアルをすべきではないかと話の出ています。マルチデバイス対応になっておらず、このような観点からリニューアルすべきだと個人的には思いますが、ほかに意識して気をつけるべきポイントはありますか?
新年を迎え、気持ちを新たに、ウェブサイトのリニューアルをしようかしら…そんなふうに考える方もいらっしゃるかもしれません。
今回の記事では、サイトのリニューアルを思い立ったときに、気をつけたいことをまとめたいと思います。
ゼロから作りなおそうとしない
サイトのリニューアルを考えたとき、「現在のサイトはデザインが気に入らないからゼロから作りなおそう」と考えがちですが、これはおすすめできません。
まずは、現在のサイトの「悪いところ」と「いいところ」を冷静に見極めるようにしましょう。たとえば、現在のサイトに対してユーザビリティテストをしてみたり、カスタマージャーニーマップという手法で分析してみたりします。「悪いところ」は改善する必要がありますが、「いいところ」まで失われないようにすることも大事です。
そのうえで、あるべきユーザー行動シナリオを描きます。描いたシナリオをもとに、競合他社サイトでユーザビリティテストをしてみるのもよいでしょう。そこで得られた気づきを自社サイトに盛り込むとしたら、現在のサイトをどうチューニングしたらよいか、を考えるのです。
言うなれば、現在のサイトは「古くなったからポイっと捨てるもの」ととらえるのではなく、「新サイトを作るうえでの生きたプロトタイプである」ととらえるのです。それなりの期間にわたって広く顧客の目にさらされて実際に使われている、ウェブ解析を通じて顧客の利用状況を豊富なデータとして入手できる、と考えると、これほど「生々しい」プロトタイプは、ほかにないといえるでしょう。
マルチデバイス対応とアクセシビリティの担保
サイトをこれからリニューアルするのであれば、「マルチデバイス対応」と「アクセシビリティ」はぜひ抑えておきたいポイントです。
ユーザーのウェブ閲覧環境を予測するのは非常に難しいものですし、現にものすごく多様化しています。PC だけでなく、スマートフォン、タブレット、そしてファブレット…。OS も Windows や Mac OS だけでなく、iOS、Android…。これらすべての組み合わせでサイトの動作検証をすることは到底無理なので、ウェブの標準仕様に正しくのっとって制作することが必須になります。
最近は「レスポンシブウェブデザイン」という制作手法が主流ですが、その際も大きな画面 (PC) 向けサイトを基準にするのではなく、小さな画面 (スマートフォン) 向けを基準にし、閲覧画面が大きくなる (タブレット、さらにPC…) につれて、便利な機能を追加してゆく、という価値観の転換 (「モバイルファースト」という考えかた) が求められるでしょう。
あわせて、今後ますます進む高齢化社会、さらにユーザーのウェブ利用シーンの多様化 (交通機関での移動中、昼夜を問わず屋外、音の出せない公共的な場所、などなど「いつでもどこでも」ウェブにアクセスされます) を見据え、アクセシビリティの担保も必須です。ウェブ利用が「オフィスや自室でのPCからのアクセス」に限定されていた一昔前は障碍者支援としてのみ捉えられていたアクセシビリティですが、今後は確実に、ビジネスの機会損失に直結する要素になるでしょう。
事業戦略との連携
企業やNPOなど、何らかの事業を展開するためのサイトであれば、忘れてはならないのが、事業戦略との連携です。現在の事業戦略、戦略実現のための戦術 (ビジネスモデル)、そして今後の事業計画 (中長期的な経営計画を含む) を確認し、それらと整合性のあるウェブ戦略を練りましょう。
サイトのリニューアルプロジェクトが始まったら、上述の事業戦略や事業計画を基に、上流工程で、「自社のビジネスゴールは何か」「そのうち、ウェブが担うのは何か」「顧客にどういう行動をしてもらい、どういう感情になって欲しいか」を真摯に検討するのです。この検討があって初めて、実のある形で、サイトの情報構造やコンテンツをプランすることができます。
言われてみればあたり前、と思われるかもしれませんが、意外とこの意識が抜け落ちている (関心がない) 制作会社も多いものです。また、意識はしていても、事業戦略からウェブ戦略への落とし込みを具体的にどう考えたらよいかわからない、ということもあるかもしれません。ぜひお気軽に、あやとりにご相談ください。