近頃はスマートフォンを使えば、どこにいてもネットにアクセスできるようになりました。ウェブサイトよりもアプリやソーシャルメディアに触れることのほうが多いかもしれません。そのような中で、企業サイトの存在意義はあるのでしょうか?
すすむスマートフォンアプリ経由のネット利用
ニールセン デジタル株式会社が調査し、2017年11月に発表した「スマートフォンのアプリ利用状況」では、以下の結果が出ています。
- スマートフォンの1日あたりの平均利用時間約3時間のうち、アプリの利用が85%を占める
- 月に31回以上利用するアプリは6個で、コミュニケーションやサーチ・SNSが上位
調査結果からは、スマートフォンアプリ経由で、ソーシャルメディアを見たり、友人とコミュニケーションをとったりすることが、日常の主なネット利用の様子であることがうかがえます。
「信頼できる一次情報」として
このようにスマートフォンアプリ経由のネット利用、特にソーシャルメディア利用の実態を見せつけられると、ウェブサイトの存在意義について懐疑的にならざるを得ません。
しかし、こと企業に限定すると、自社サイトでの情報発信は、ソーシャルメディアでの情報発信に多くの点で勝ります。
確かにソーシャルメディアでの情報発信は手軽ですし、更新もしやすいです。しかし、情報の蓄積という点で弱いところがありますし、第三者のプラットフォームの上で展開するものなので、運用上の制約やサービス閉鎖などのリスクも考えておかなくてはなりません。
一方、企業が独自のドメイン名で自社サイトを運営することは、その企業自らが「一次情報」を発信していることになります。発信する一次情報が良質で誠実なコンテンツであれば、そしてそれが継続的に蓄積できれば、それは貴重な情報資産になっていきます。
こうして形成された情報資産は、顧客の目にとまる機会も増え、信頼感も生み出し、ひいてはブランド訴求にもつながっていくのです。
「顧客タッチポイントの間口を広げる手段」として
ソーシャルメディアでの情報発信は、顧客がそのソーシャルメディアのアカウントを持っていなければなりませんし、ソーシャルメディアの種類によってはアプリをインストールしてもらう必要もあります。
これに対しウェブサイトは、特定のプラットフォームに依存しないので間口の広い顧客タッチポイントとして機能させることができますし、上述したように情報資産化とも相まって、ユーザーのさまざまな要求に応えることもできます。
ユーザーのアプリ利用率の高さに着目して、自社専用アプリの開発を考えている方もいるかもしれません。しかし、その運用は容易ではありません。 複数のモバイルプラットフォーム(iOS、Androidなど)ごとにアプリを開発し、ユーザーにインストールしてもらい、しかも、習慣的に使用してもらわなけらばならないからです。 さらに、開発した自社専用アプリをアピールするために、自社サイトも必要になります。 限られた開発や運用のリソースを、どの程度まで自社専用アプリにつぎ込むかはよく検討する必要があります。
効果検証がしやすい
もうひとつ、ウェブサイトには、効果検証が比較的しやすいという利点もあります。
ソーシャルメディアの場合、プラットフォームが提供する範囲でしか効果測定ができませんが、自社サイトであれば、各種の解析ツールを自社のニーズに合う形にして効果検証ができます。顧客行動の仮説を検証できることで、実効性のある戦略立案や改善につなげやすくなります。
顧客とのコミュニケーションをソーシャルメディアやアプリだけで完結していても、それなりの効果が出ているのであればそれでよいのかもしれません。しかし継続的に安定した顧客コミュニケーションを図っていくのであれば、良質な一次情報が蓄積された自社サイトを持っているかいないかでは、大きな違いが出てきます。
拠り所となる情報資産をベースに、ソーシャルメディアや自社専用アプリを組み合わせることで、コミュニケーションに幅や深みが出ることでしょう。顧客と、どのような関係を築きたいのかを考えることで、自社サイトの存在意義を再確認してみてはいかがでしょうか。