ウェブサイトは、今や企業のブランディングや営業マーケティングにとって必要不可欠なツールです。多くの人々が日常的にインターネットを介して情報収集やコミュニケーションを行なうようになった現在、ウェブをどう活用するかがビジネスの成否に大きな影響を与える時代と言ってもよいでしょう。
今回のコラムでは、ウェブサイトの運営を担当されることになった方やウェブサイトの運営をマネジメントする立場になった方 (経営者を含む) に、サイト運営の心構えとして押さえておいていただきたいことについてご紹介したいと思います。
ウェブというメディアの特性を理解する
ウェブサイトを運営するにあたっては、ウェブというメディアの特性を理解し、その特性をうまくいかすことが大事です。以下、あげてみましょう。
ユーザー中心
ウェブは「ユーザー中心」のメディアです。他のメディアが「発信側からの一方的なコミュニケーション」であるのに対し、ウェブは「双方向のメディア」といえます。ウェブサイトはユーザーの能動的な行動に対して的確にこたえられるものでなければ存在価値がありません。
エコシステム
ウェブの世界において、自社サイトだけで繁栄し続けることはできません。検索エンジン、ソーシャルメディア、クチコミ (レビュー) サイトなど、外部のサイトで自社のサイトがどう扱われているかも大きなポイントです。また、自社サイトのコンテンツの中にはGoogle マップや YouTube 動画など他のサービスの仕組みを借用しているものも少なくないことでしょう。ウェブサイトというのは、大きな「ウェブエコシステム(ウェブ生態系)」の中で生かされている存在といえます。
低コスト/スピーディー
ウェブサイトを広告/広報の手段のひとつとして考えた場合、マスメディアを介した情報発信に比べ、低コストかつスピーディーに情報を発信することができます。中小企業や個人商店でも工夫次第で大手企業に負けない充実した情報発信が可能です。
ウェブ解析
他のメディアと異なりウェブサイトでは、ユーザー (サイトへの来訪者) の足取りを「ウェブ解析」という形でモニタすることができます。ユーザーの興味関心は何か、ユーザーがつまずくのはどこかといったことを実データで見ることができます。それをもとに効果的な PDCA サイクルを回すことができます。
アクセシビリティ
他のメディアと異なり、ウェブサイトは「アクセシビリティ」に優れています。老眼や弱視の方が画面を拡大したり、視覚障碍者が音声でコンテンツ内容を読み上げたり (あるいは点字で出力したり)、聴覚障碍者が動画を字幕で楽しんだりといったことが可能です。スマートフォンのような小さな画面でも PC と同などの情報にアクセスすることもできます。この特性をうまくいかすことで、さまざまなビジネス上の機会損失を防ぐことができます。
リスクを理解する
ウェブサイトの運営には以下のようにリスクもいろいろとあります。リスクを正しく理解し適切な対応策を講じることが大事です。
- 簡単に (低コストで/スピーディーに) 情報発信ができるだけに、ひとりの担当者の不注意で安易に誤発信をしてしまう。
- 顧客とのコミュニケーションがこじれて、ソーシャルメディアを介して「炎上」する。
- 顧客の個人情報を取得している場合、その情報が漏えいする。
- クラッキング (ハッキング) によるコンテンツの改ざんやサーバーのダウンなどによって、サイト運営が平常通りできなくなる。
どうすればよいか?
ウェブの特性や、サイト運営に付随するリスクを踏まえたうえで、では実際にどうすればよいのでしょうか?以下、あげてみましょう。
運用管理のガバナンスを整備する
効果的な情報発信、適切な顧客とのコミュニケーション、リスク対策といった観点でウェブサイト運用管理のガバナンスを整備しましょう。人員体制、教育、ワークフロー、緊急対応フロー、制作ガイドラインなどさまざまな要素が含まれます。このようなガバナンスをきちんと整備し徹底することでサイト運営の品質維持/向上が期待できます。
「ユーザー中心」を徹底する
ひとくちに「ユーザー中心」と言ってもさまざまな要素があります。たとえば、以下、とくに意識したいものです。
- 検索エンジンからの流入 (集客) を期待するのであれば、「ユーザーの言葉」を意識してコンテンツを作る。
- アクセシビリティを担保し、つまらない機会損失がないようにする。
- 組織の都合ではなく、ユーザーが求める情報に素早く到達でき、かつ快適に利用できることを優先する。
- ユーザーからのコミュニケーションを快適にする。問い合わせ窓口、取引 (購入) 手続きなどでユーザーに余計な負荷をかけないよう配慮する。
- さまざまなデバイス (PC、タブレット、スマートフォン)、さらには ウェブ以外の顧客タッチポイントも含めた「クロスチャンネル」を意識し、一貫して良質なユーザー体験 (User Experience = UX) を提供する。
法令を順守する (コンプライアンス)
ウェブサイトの運営にあたっては、さまざまな法令が関係してきます。「知らなかった」ではすまされません。以下の法律についてはひととおりの理解をしておくとよいでしょう。
- 個人情報保護法
- 商標法
- 著作権法
- 景品表示法
- 特定商取引法
- 下請法
セキュリティ対策を講じる
情報の漏えい防止のため暗号化した (SSL をかけた) フォームを使う、改ざん防止のため脆弱性チェックを実施するといったセキュリティ対策を講じるようにしましょう。また、セキュリティ問題の多くは「人災」であることが意外に多いので (社員が営業目的で顧客データをノートPCにダウンロードして持ち歩き、そのノートPCを飲み会の後の電車に置き忘れたなど…)、担当者に対する定期的なセキュリティ教育も不可欠です。
絶えずアップデートする
ウェブサイトは「生きもの」です。鮮度の高い情報更新を継続的に行なう、ウェブ解析やユーザビリティテストを採り入れて PDCA サイクルを回すといった具合に、絶えずアップデートし続けるようにしましょう。
楽しむ
以上、いろいろとあげました。「ウェブサイト運営って大変だな」と思われた方も多いと思います。実際「楽 (らく)」ではありませんが、トライ&エラーや仮説検証がやりやすく、施策に対する効果も見えやすいので、その意味では「楽しい」といえます。ウェブサイト運営を担当される (あるいは管理される) みなさんには、大いに「楽しみ」つつ、生き生きとした情報発信/コミュニケーションをしていただければと思います。