Facebook のようなソーシャルメディアが普及して、誰でも簡単に情報発信ができるようになったからでしょうか、近頃、こんなことが目に付くようになりました。
- テレビ放映の画面を写真に撮って (または画面をキャプチャーして)、自分の投稿に貼り付ける。
- 新聞や雑誌の紙面 (誌面) をスキャンして自分の投稿に貼り付ける。
- 第三者が制作した動画を、自分の投稿に埋め込む。
実際に大勢の人が悪気なくやっているので、「問題ある行為」ではないように感じる方が多いことでしょう。また、手元のスマートフォンをちょっと操作すれば簡単にできてしまうので (内蔵カメラなど)、気軽にやってしまう方も多いのだと思います。
上記の行為はいずれも、自分ではなく「第三者が作ったもの」を二次的に複製して発信している、という共通点があり、許可なく行った場合は、作り手の権利を侵害している可能性があります。プライベートな SNS であればまだしも、同じノリで勤務先の企業サイトや企業 SNS アカウントでも同様のことをしてしまうと、大きな問題に発展するおそれがあります。
ここで意識しておきたいのは、「著作権」です。みなさんは、著作権に気をつけていますか?
著作権とは?
著作権とは、「言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、写真、コンピュータプログラムなどの表現形式によってみずからの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する財産的な権利
(Wikipedia の「著作権」より引用)」です。著作物を作った人 (著作者) に適正な名誉や対価をもたらすことを通じて、文化の健全な発展を後押しすることを目的にしています。
著作権は大きく、「著作者人格権」と「著作権 (財産権)」に分けられ、下記のように、実にさまざまな権利が著作権者に認められています。
- 著作者人格権 (他社に譲渡や相続ができない、著作者本人のみがもつ権利。)
- 公表権
- 氏名表示権
- 同一性保持権
- 財産権 (著作者本人に帰属する場合もあれば、第三者に譲渡/相続される場合もある。権利者は、以下の権利を持ちコントロールできる。)
- 複製権
- 上演権・演奏権
- 上映権
- 公衆送信権
- 口述権
- 展示権
- 頒布権
- 譲渡権
- 貸与権
- 翻訳権・翻案権
- 二次的著作物の利用に関する権利
個々の権利についてこのコラムでは詳述しませんが、著作権者に無断でやってはいけない行為が、実はいろいろあるということは、イメージいただけるかと思います。
ちなみに「Web で情報を発信する権利」は、上記のうち「公衆送信権」に該当します。つまり、元の著作権者から公衆送信権を譲渡されたり、または許諾を受けたりしない限り、その著作物をやたらに Web で発信してはいけないのです。
どうすればいいの?
基本的な考えかたとしては、やはり「著作権者の許諾を事前に受けるようにしましょう」ということになります。
ただし、ある利用目的の範囲内であれば (たとえば、私的使用であったり、引用であったりする場合)、著作権者の権利行使が制限されることになっています (つまり、許諾を受けなくても利用することができます)。Web コンテンツの場合、多くのケースでは「引用」に該当すると思いますので、その場合は引用である旨と出典を明示するようにしましょう (ソースコードにおいても、<blockquote> や <q> 要素で明示的にマークアップしましょう)。
実際の引用にあたっては、オリジナルのソースを引用するようにします。たとえば、YouTube の動画を自分の ウェブページに埋め込むことができますが、その YouTube 動画自体がオリジナルではなく、著作権侵害を伴う二次的著作物である可能性もあります。「埋め込もうとしている動画は公式のものか?」など、しっかり確認したいものです。
また、たとえ引用であったとしても、元記事を翻訳して掲載するような場合は「同一性保持」や「翻訳権・翻案権」に抵触する可能性があることにも注意が必要です。
このように、いろいろと気をつけなければならないことがあり難しそうな印象を持たれるかもしれませんが、大切なのは、オリジナルの著作物を作った人に対するリスペクト (敬意) です。引用である旨を明示したり、事前に著作権者から許諾を受けたりするのは、そのリスペクトを具体的に行動で示しているのに他ならない、といえるでしょう。企業として情報発信する際は特に意識したいものです。