当社は代表が変わりウェブ活用に力を入るようになりました。その一貫としてしっかり予算をとってウェブ広告を出稿することになりましたが、手あたり次第に出稿しており闇雲にウェブ広告活用しいる感じが否めません。ウェブ広告とどのようにつき合うのがよいでしょうか?
「ウェブ広告」と言っても、さまざまなです
みなさんの会社では、ウェブに広告を出稿することもあるかと思います。もっともポピュラーなのは検索エンジンの検索結果ページに表示される広告 (Google AdWards など) だと思いますが、サイト運営者が任意でページ上に広告を表示させたり (旧来のバナー広告に加え、ユーザーの興味関心に連動した Google AdSense のような仕組みもあります)、さらに昨今では、ソーシャルメディアのタイムラインに広告を出すことができたり、スマートフォンアプリ内に広告を表示させることができたり (アップルの iAd や Google の AdMob など) …と、ひとくちに「ウェブ広告」と言っても、さまざまな広がりを見せています。
広告は無視されやすい
ところで、ウェブにおける広告というのは、一般的には無視されやすいという性質を持っています。「バナーブラインドネス (banner blindness)」という言葉がありますが、ウェブ利用者にとっては「広告 (バナー) は自分の行動と関係ない」という認識に (無意識的にではありますが) なりやすいのです。
ユーザビリティテストを実際にやっていみると、ユーザーがいかに広告に無関心か、を目のあたりにすることができます。本当は広告ではない、ユーザーの主目的に合致した有用であるはずの (同一サイト内のコンテンツへの) リンクであっても、そのリンク表現がビジュアル的に凝りすぎて結果的に「広告っぽく」見えてしまうと、それだけで、そのリンクが見向きもされない…というケースすらあります。
広告が無視されないように、とにかくユーザーの目を惹こうと躍起になって、過度な演出 (アニメーションや閃光など) をしてしまう広告主もいますが、ユーザーの集中力を削いだり、発作を引き起こしたり、とアクセシビリティ面で問題になるおそれがありますし、何よりもユーザーを不快にします。
広告はブランドを傷つけるおそれがある
広告がユーザーを不快にさせることは本末転倒で、どの広告主もそのようなことは望んでいないはずですが、結果的に、広告によってユーザーの感情が害されてしまうこともあります。
上述の、過度な演出の広告以外にも、たとえば以下のようなケースがあります。
- ソーシャルメディアのタイムラインで、友達の投稿だと思ってクリックしたら実は広告だった。
- スマートフォンアプリの画面下に広告が出ていて、アプリの機能 (メニューなど) を操作しようとしたら、隣接していた広告部分を誤タップしてしまい、望んでないのに広告の先に誘導されてしまった。
ひとことで言うと、ユーザーからすれば「だまされた」状態です。
出稿した広告自体に問題があるというよりは、出向先サイト (アプリ) の画面デザインの問題、といえなくもありませんが、だまされたユーザーのネガティブな感情の矛先は、広告主にも向けられるでしょうし、その結果、かえってブランドイメージを低下させてしまうおそれもあるので要注意です。
ウェブは「セルフサービスメディア」であることをあらためて意識する
ウェブは「セルフサービスメディア」であるとよく言われます。ユーザー自身が目的意識を持って、自律的に、主体的に、情報を探索します。これはつまり、ユーザーの姿勢が比較的「受け身」であるテレビと異なり、ウェブにおいては、広告がユーザー行動を阻害するリスクが高いことを意味しているといえます。
そんな中、ウェブにおける広告というのは、どうあるべきなのでしょうか。ユーザーのコンテキストにあわせて、さりげなく (任意に無視することが可能な形で)、あるセレンディピティ (思わぬ気づき) をもたらしてくれるのが、理想的なウェブ広告ではないか、と私は考えています。広告内容の検討 (コピーやビジュアルデザイン) と広告出稿先の選定の両面から、ユーザーに好印象を残す品位のある広告を練っていきたいものです。