あやとりの業務のひとつにサイト診断があるのですが、どういう判断で進めるのがよいか、毎回悩ましいところです。サイト診断とは「ユーザーから見えるウェブサイトの評価」ですので、診断者の主観的な好き嫌いや、利便性の観点からだけでは、論点がずれてしまいます。 そこであやとりでは、そのサイトの会社や組織の「使命(mission)」「目的」「目指すところ」とはなにか、まず確認します。
1. 組織には必ず「目的」がある
組織(organization)が組織として成り立つには3つの要素が必要だと、アメリカ合衆国の経営学者であるチェスター・バーナードは言っています。
組織の3要素
- 共通の目的をもっていること(組織目的)
- お互いに協力する意思をもっていること(貢献意欲)
- 円滑なコミュニケーションが取れること(情報共有)
C.I.バーナード『経営者の役割【経営名著シリーズ 2】』ダイヤモンド社、1968年
会社も立派な組織で、まず「組織目的」がなければ、会社として成立しません。つまり、何を社会に提供するために、どんなことをするために、この会社が社会に存在しているのか?という問いに応えなければいけません。
2. あなたの事業は何か?
ドラッカーは、世界的大企業やボランティア団体、NPO組織にいたるまで、さまざまな組織から相談を受けていました。そして最初に必ず「あなたの事業は何か?(What is your Business?)」と聞いていたそうです。
「われわれの事業は何か」を問うことこそ、トップマネジメントの責任である。
「われわれの事業は何か」との問いは、企業を外部すなわち顧客と市場の観点から見て、初めて答えることができる。
P.F.ドラッカー『マネジメント【エッセンシャル版】』ダイヤモンド社、2001年、P23
ドラッカーは、鉄鋼会社は鉄をつくり、鉄道会社は貨物と乗客を運び、あやとりはウェブサイトをつくる、という商品名やサービス名を聞いているわけではありません。
「顧客と市場に求められる事業、本質とは何か」ということを聞いているのです。
3. なぜ、あやとりはウェブ事業なのか
「私たちは、戦略的ウェブ活用を通じてイキイキとした組織づくりに貢献します」――これは私たちあやとりのウェブサイトの「会社紹介」の1行目に明記していることです。ウェブを制作するのはあくまでも手段であり、その目的は「組織づくり」、しかも「イキイキとした組織づくりに貢献する(お客さまに貢献する)」ことと、定義づけられています。
「組織づくり」の貢献する手段は、ウェブ制作だけではありません。ただ、あやとりに集うメンバーの、ノウハウ、強み、パフォーマンスが一番発揮できるものが、ウェブ制作を通じた貢献だったのです。
事業をはっきりと定義すると、組織の目的も明確になり、「やることとやらないこと」「経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)を集中させるものとさせないもの」が定まります。
4. ウェブサイトで会社の目的を読み取る
サイト診断に話を戻しますと、まず「会社紹介」「会社概要」「社長のことば」「IR情報」などを読み込み、さらに、製品やサービスやサポート、キャンペーン、動画といった個別のコンテンツを確認していきます。
もし、各部署、または各担当者がめいめいバラバラな目的のままコンテンツを作り続けていくと、「船頭多くして船山に上る」という言葉にもあるように、各コンテンツ間の整合性が失われ、ユーザーに正しい情報を伝えられなくなり、せっかくの企業サイトもただのデジタル紙芝居となってしまいます。
その問題点を明確にするために、「あなたの会社の事業はなんですか」というドラッカーの問いかけをとおした事業目的の理解が不可欠なのです。