自社のウェブサイト運用体制をきちんと構築しなければと思っているのですが、各部署にサイト運用を任せるのがよいのでしょうか?それとも、ウェブ専門部署が一元的に管理するほうがよいのでしょうか?
それぞれに利点と課題がある
各部署にサイト運用を任せることの利点は、各部署のマーケット感覚、現場感覚を即座にコンテンツ発信に生かせる点です。ウェブをマーケティングツールととらえるならば、各部署が自社ウェブサイト運営に対して主体者意識をもてる意義も大きいでしょう。一方で、各部署の担当者の資質の違いからコンテンツの品質がばらついてしまったり、全社的なトーン&マナーの一貫性が損なわれたり、システムやアセットを共用しないことによる重複コストが発生したり、といった課題があります。
ウェブ専門部署による運営の利点は、ユーザビリティやアクセシビリティを含む品質管理やトーン&マナーの一貫性を担保しやすいこと、全社的に見てコストの最適化が図れること、セキュリティ対策のスムーズさなどが挙げられます。一方で、ウェブ専門部署が各部署のマーケティング感覚、現場感覚を適切に共有してタイムリーにコンテンツ発信できるのか、という課題があります。
いずれにしても全社的なウェブガバナンスは不可欠
上述の利点と課題を検討のうえ、どちらを採るかは各社それぞれになりますが、企業として責任ある情報発信をする以上は、いずれにしても、全社的な観点でのウェブガバナンスは不可欠です。たとえば、以下のような要素が挙げられます。
- 各種ガイドライン (制作ガイドラインや管理運用ガイドラインなど)
- 運用フロー
- ドメインネーム管理
- セキュリティの担保
- ブランディング (CI や VI)
- ソーシャルメディアアカウント
- インフラ整備 (商品情報やアセット管理のためのデータベース、CMS、など)
上記について、ルールを制定し、普及啓蒙/周知徹底を図り、有事 (たとえば「炎上」など) における対応を明確にしなければなりません。仮にサイト運用を各部署に任せるとした場合でも、全社的な観点で、どこかの部署 (広報部門や IT 部門など) がこうしたガバナンス的な機能を担う必要があります。
検討のヒント
絶対の正解があるわけではないので判断が難しいところではありますが、ウェブ専門部署を置くか、各部署に任せるかは、会社の規模、マーケティング部門のウェブへの関与希望度、ブランド戦略、といったこともあわせて検討するとよいと思います。
会社の規模がそれなりに大きく、マーケティング部門がウェブ活動を積極的に進めたいという意志や人的リソースを持っている場合は、全社的なウェブガバナンスを順守する前提で、各部署にサイト運用を任せるのがよいでしょう。現場のマーケットに対する感覚を最大限にいかし、スピーディーにコンテンツを発信し、顧客とのコミュニケーションをはかるのです。もし各部署に「意志はあってもリソースがない」場合は経過措置的に、まずはウェブ専門部署を中心に実務を回しながら各部署のウェブサイト運営スキルを高めてゆき、ある程度熟したところで各部署での主体的な運用に切り替える、という手もあります。また、自社がマルチブランド戦略を採用している場合は明らかに、各部署 (つまり各ブランドの推進主体) が主導でサイトを運用すべきでしょう。
会社の規模が小さい場合や、強力なマスターブランド戦略 (下記註) を採用している場合は、敢えて一元管理的にウェブ専門部署によってサイトを運営する、というのもありでしょう。トーン&マナーを含め、ブランディング観点での訴求が徹底しやすいからです。ただしその場合、あらかじめ各マーケティング部署のあらゆる活動が (ウェブに限らず) マスターブランド戦略を順守する体制になっていて、マスターブランド戦略に基づく統制 (ガバナンス) を受け入れることが社内の文化として定着していること、ウェブ専門部署とマーケティング部署とのコミュニケーションが密にできていて、ウェブ専門部署でもマーケティングマインドが共有されていることが前提になると思います。
註 : マスターブランド戦略とは、すべてのブランドコミュニケーションを、最上位のマスターブランド (たとえば企業全体を表現するコーポレートブランド) ひとつで展開する戦略のことをいいます。