先日、東京三菱UFJ銀行のホーム (トップページ) に「重要なお知らせ」が掲載され、Web業界でちょっとした話題になりました。
上部の大きく青の破線の四角で囲ったところが、今回、緊急告知としてアナウンスされている場所です。
通常は、インターネットバンキングへのログイン機能や各種プロモーションを表示するためのイメージ画像エリアなどが表示される場所なのですが、それを押し下げるかたちで挿入されています。インターネットバンキングのパスワードを盗み取ろうとする偽メールに対して、最優先で注意喚起しようとする銀行の姿勢を表しており、大変評価できることだと思います。
さらに、ユーザービリティ上の工夫を加えることができるならば、この注意喚起をより効果的にすることができると考えられます。
どうすればよいか?
たとえば、青の実線の四角で囲った重要なお知らせは、テロップ表示ではなく、全文表示の方がよいと思われます。
流れ形式で表示されるテロップは、動きがあり、反射的に目が行きやすいというメリットがある一方で、記載事項をきちんと確認しようとすると、全文が表示されるまで待たなければならないというデメリットもあります。
緊急告知という目的を考えれば、内容確認に一定時間を待たせる理由はないように思えますし、学習障碍や認知障碍のように、流れては消えてゆく情報についてゆくことが難しい方もいらっしゃいます。
また、テロップ表示の下にある、リンクの表記も「くわしくはこちら」ではなく、より具体的にした方がよかったように思えます。たとえば「偽メールの具体例」などと表記した方がより注目を集められたのではないでしょうか。スクリーンリーダー利用者(視覚障碍者)にとっても、この方がわかりやすい情報提供といえるでしょう。
重要なお知らせは一か所にまとめる
緊急告知の下のイメージ画像エリアには、大きな文字で「ダマされないで!」と掲載されていています。重要な告知が二か所にあると、どちらから読めばよいのか悩ませてしまいます。さらに、このイメージ画像エリアは、一定時間後に別の画像に切り替わってしまう表示のために、最後まで告知内容を確認できないというおそれもあります。
やはり、重要なお知らせは、一か所にまとめる、読み手が落ち着いて最後まで読むことができるようにするといった工夫が必要だと思われます。
日頃からの備えが大事
このような工夫は、「緊急告知が必要になった際、どうやってユーザー(顧客)に情報を提供するか」をあらかじめ計画しておき、ウェブサイトのページ設計にも盛りこんでおくことによって、スムーズに実行することができます。
有事のときにあわてて対応するのではなく、企業のリスク管理の一環として起こり得る問題をひととおり想定しておき、「このようなケースではこう対応する」という情報開示のテンプレートを準備しておくとよいでしょう。あわせて、有事の際の情報開示ワークフロー(誰が告知コンテンツを作成し、誰が公開承認をするか)を明確化しておくことで、混乱せずに対応することができます。
今回は実例をもとにお話をしましたが、この例をもとに、自社なら何をすべきか、あらためて考えてみるのもよいと思います。