当社は、ウェブを活用するためウェブ解析やマルチデバイスにサイトをリニューアルするなど、先進的におこないましたが、時代にあわせて漠然とやってしまっています。どのようにテクノロジーとつき合うのがよいのでしょうか?
インターネットとのつき合いかたの変化
従来であれば「制作されたユーザーインターフェースを、デバイスの画面上で、ユーザーがみずからの操作で利用すること (たとえばウェブページを閲覧したりなど)」が、私たちのインターネットとのつき合いかたでした。これからはそれに加えて、デバイス利用を介して私たちの行動 (一挙手一投足) が、私たち自身の操作とは無関係にデータ化されてゆく時代です。新しいデバイスによってこの傾向はますます高まってゆきます。
たとえば、スマートフォン以降、デバイスには GPS (Global Positioning System : 全地球測位システム) による現在位置の割り出しが普通になり、地図系アプリや実店舗検索系アプリなどで、自分の居場所に応じた適切な情報提示が自動的になされるようになっています。そして昨今話題の Apple Watch をはじめとするスマートウォッチではフィットネス系の活用例が引き合いに出されることが多いですが、身体への密着度が高いだけに、私たち自身の動き (運動) を逐次的にデータ化し蓄積しやすくなっています。
この傾向は、「モノのインターネット (Internet of Things : IoT)」の広がりともつながります。つまり、画面を有するか否かを問わずあらゆる身の回りの道具がインターネットにつながり、私たちの意識的な操作行為によらない情報 (置かれた状況や、使用状況など) が自動的にデータ化され、蓄積され、分析され、場合によっては私たちの行動のパターン化や予測に活用されて、さまざまなシナジーが生まれる…そんな一端であるといえそうです。
ところでこの手の話はとかく技術先行になりがちですが、「プロダクトアウト」な考えかたではなく「マーケットイン」に近い発想で、顧客 (利用者) の生活と結び付けて考えてみることが、新しいビジネスアイデアとして採り入れるうえで大切かなと思います。
顧客の利便性を高める
テクノロジーやデータを顧客の生活と結びつけて考える際、まずは「顧客の利便性を高めること」をいろいろ考えてみるとよいと思います。
上述の GPS による居場所の割り出しをもとに、フォームの住所記入欄への入力の手間を省く (あらかじめ住所が入力されている状態にする)、食事の店を探すのに、自動的に最寄りのお店をリストアップする、などが典型的です。
場所の情報 (GPS) だけでなく、たとえば、以下のようなものが、顧客の利便性を高めるのに寄与するデータになり得るでしょう。
- 方角 (東西南北といった向き)
- 季節 (日付)
- 時刻
- 所要時間 (ある時点からある時点までのかかった時間)
- 移動距離 (ある時点からある時点までの動いた距離)
- 動きの有無および速度
- 外的な要因 (たとえば、そのときの天気や気温、道路の渋滞状況、公共交通機関の運行状況、など)
- これまでの履歴 (閲覧したコンテンツ、注文したもの、など)
- …などなど。
これらのデータを使って、顧客の行動をどう効率化 (省力化) できるか、どう先回りできるか、どう好みにマッチした提案ができるか。もちろん、複数の種類のデータを掛けあわせて考えてみても面白いと思います。
マーケティングやサポートに活用する
テクノロジーやデータは、顧客の利便性を高めるだけでなく、マーケティングやユーザーサポートに活用することもできるでしょう。ウェブ解析 (ウェブ解析) を実践されているウェブ担当者の方は多いと思いますが、解析対象がウェブサイトだけにとどまらず、利用者のあらゆる行動が解析対象となる…そんなイメージです。
多くのビジネスにおいて、ウェブ (自社サイト) の利用は、顧客の一連の体験 (ユーザーエクスペリエンス : UX) の「一部」にすぎないと思いますが、その「一部」しかこれまでは解析できず、それ以外の部分は推測による部分が多かったと思います。利用者の動きが逐次データ化されるようになれば、これら推測によっていた部分も数値として測れるようになり、顧客行動の現状把握や予測が、精度高くできるようになることが期待できそうです。
各社のプライバシーポリシーの見直しが必要になるかもしれませんが、そういった課題をクリアしつつ、積極的に採り入れる企業は増えてゆくと思われます。
今は難しくても想像してみよう
テクノロジーは、ものすごい速さで進化します。今はできなくても (あるいは難しくても)、近い将来容易に (低コストで) できるようになることもあります。
私たちの一挙手一投足が各種デバイスを通じてデータとなってインターネットに流れ、それがさまざまな形で活用される…という時代、一部の大企業だけでなく、中小企業でも、普通にデータを活用する時代になるかもしれません。
技術的なことは抜きにして、「このデータと、こんなデータを得ることができて、組みあわせてみたら、こういうことが可能になるのに (あるいは、快適になるのに、楽しくなるのに、など…)」といった想像を繰り返してみることが大事かなと思います。日々の仕事で忙しい中ではありますが、気分転換に楽しく、そういったことを仲間とブレストしてみるのも、面白そうです。