Management for The Uncertainty
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第5回:「成果」をあげるための「成果物」の考え方

投稿日: | 投稿者:新井 宏征

この連載では、不確実な時代において事業を創造していくために必要な考え方や手法をお伝えしています。今回はそのような考え方や手法にこだわるあまり、ついつい陥ってしまう「手段の目的化」の罠と、ウェブコンテンツなどを考える際に必要となる「成果」と「成果物」の違いをみていきましょう。

1.「手段の目的化」を考える

私たちは何かの目的を達成するために、さまざまな手段を使います。しかし、日常業務のなかで「手段」と「目的」が入れ替わり、「手段の目的化」が起こるケースがあります。

【例:ある職場でのケース】
ある職場で、新たに「マネージャーが部下の日々の様子を知り、必要があれば適切な対処をするために、全社的に日報を書く」という制度が導入されました。これは「部下のケアをする」という目的のために、「日報」という手段を活用していると言い換えられます。

この制度が導入されて以降、マネージャーは、日報に記入すべき項目を必要に応じて随時追加するようになり、気づくと10以上もの記入事項が含まれる日報になっていました。
仕事が終わってからこの日報をまともにすべて書こうとすると、それだけで30分以上はかかってしまうようなボリュームです。仮に17時30分の定時に仕事を終えても、日報を書いていると、退社するのが18時以降になってしまいます。そのため、提出される日報には「昨日と変化なし」というような適当な記述が目立ってきました。
これは良くないと思ったマネージャーは、新たに「マネージャーのチェックの結果、日報の内容に不十分な点があれば書き直さなければいけない」というルールを追加しました。これによって、日報のチェックが厳格化され、マネージャーに「帰って良し」と言われるまで何度も書き直さなくてはいけない人も出てきました。ある社員は、5回の書き直しを命じられ、「帰って良し」と言われて時計を見ると20時近くになっていたこともあるそうです…。

ここで紹介したのは架空のケースですが、これに似た場面に遭遇した方も多いのではないでしょうか。
このケースでは「部下のケアをする」という目的のためにはじまった「日報」という手段が、いつしか「マネージャーにとって正しい日報を書く」という目的になってしまっています。これが「手段の目的化」という現象です。

マネージャーも部下も「マネージャーにとって正しい日報を書く」というすり替わった目的を満たすことに必死になってしまい、本来の目的である「部下のケアをする」という目的がまったく達成されていないどころか、逆効果になってしまっていることがわかります。

このように「手段の目的化」とは、何かの目的を達成するために講じた手段をこなすことが目的化してしまい、本来の目的がないがしろにされてしまう現象のことをいいます。

2.「手段の目的化」を避けるための「成果物と成果の違い」の理解

では、このような「手段の目的化」の罠に陥らないようにするためには、どのようにすれば良いのでしょうか?
そのためには「成果物」と「成果」の違いを明確に理解するところからはじめるのが良いでしょう。「成果物」と「成果」の違いは次のようになります。

定義 先ほどのケース
成果物
(Output)
私たちが取り組んだり、つくったりするもの 日報
成果
(Outcome)
成果物によってもたらされる(プラスの)効果 【短期的】
部下のケアが適切にできるようになる
【中長期的】
働きやすい職場になる

先ほどのケースでの成果物(Output)は「日報」です。そして、その成果物を部下に日々つくってもらい、マネージャーがチェックをすることによってもたらされる成果(Outcome)は、短期的にみれば「部下のケアが適切にできている状態」といえます。さらに、この成果が積み重なることで、中長期的には「働きやすい職場の実現」という、より大きな成果につながっていくのです。

このように成果物(Output)と成果(Outcome)を明確に分けて考えることができれば、「手段の目的化」は起こりにくくなります。

3.「手段の目的化」に陥らないための「成果物と成果」の考え方

ここからは「成果物(Output)」と「成果(Outcome)」の違いを踏まえて、日々の仕事において「手段の目的化」に陥らないようにするための実践のコツを3つご紹介します。

(1)「成果」から考え始め、つねに「成果」に立ち返る

「手段の目的化」に陥らないためにおこなうもっとも重要なことは、何かの企画やコンテンツを考えるときに、必ず「成果」から考え始めることです。

例えば、自社が主催するイベントの集客のためのランディングページを作成することになったとします。このときに「どんなランディングページにしようか?」と考え始めてしまってはいけません。それは「成果物」から考え始めてしまっています。
この問いを「ランディングページ(成果物)をとおして、どんな成果を得ようとしているのか?」と置き換えてみます。
すると、先ほどの日報の場合のように、短期と中長期で分けたときには、短期的な成果としては「イベントに自社のターゲット層をなるべく多く集客する」こと、中長期的には「イベント参加者からのプロジェクト発注がある」というように考えることができるでしょう。

もちろん、ウェブを担当するみなさんが、つねに成果までコントロールできるわけではないでしょう。そのような場合、想定している成果を明確に伝えられないまま「この成果物をつくって」という依頼が来ることもあるはずです。
そのような場合でも、そのまま依頼を受けるのではなく、「この成果物をつくることによって期待している成果は何ですか?」と確認することを心がけましょう。

(2)「成果」を達成するための「成果物」を柔軟に考える

ここまで書いたように「成果」から仕事を考え始めると、「その成果をあげるために、この成果物で良いんだろうか?」という疑問が浮かんでくることがあります。これは、とても大事な疑問です。

先ほどのイベントの例でいえば、イベントにターゲット層を集客し、個別プロジェクトの受注を増やすためには、ランディングページ以外の成果物も考えられるかもしれません。また、ランディングページをつくるにしても、どのようなコンテンツを載せるのか(文字のみか、動画も入れるかなど)、いろいろなパターンが考えられるはずです。

このように成果を入り口にして成果物を考えると、いままでにやってきたことにとらわれない柔軟な発想をしやすくなります。

(3)「成果物」の検証だけではなく、「成果」も検証する

成果物と成果を分けて考えると、効果を検証する際にも、それらを分けて考えることができるようになります。

再度、ここまで紹介したイベントを例にしてみましょう。
ランディングページは「イベントに自社のターゲット層をなるべく多く集客する」という成果を達成するためにつくられた成果物でした。その成果を念頭に置いた際、次の【A】【B】では、どちらのケースがより効果が高いといえるでしょうか?

【A】 【B】
ランディングページへのアクセス数は自社サイトとしては過去最高を記録した。
しかし、イベント参加者は自社のターゲットとは関係ない人が多かった。
その後、その参加者からのプロジェクトの発注はない。
ランディングページへのアクセス数は過去平均よりもかなり少なかった。
しかし、イベント参加者の割合をみると自社のターゲット層が大半を占めていた。
イベント直後のプロジェクトの問い合わせが多く、うち2件がすぐに決まった。

当然【B】ですね。

ここからわかるように、成果まで意識をして仕事を進めるためには、成果物の効果検証だけではなく、成果の効果検証までを意識しなくてはいけません。

ウェブを担当する人が、成果物だけではなく、成果まで責任を負うケースばかりではないかもしれません。そのような場合でも、成果まで責任を負っている担当者と連携しながらウェブの構築や運営をしていくことが、ウェブを戦略的に活用するために必要な考え方なのではないでしょうか。

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